「昔からのお客様には電話予約が喜ばれるし、システム導入にもコストがかかる」——電話予約を中心に運営してきた旅館にとって、オンライン予約の整備は後回しにされがちな課題です。
しかし海外ゲストにとって、電話予約は日本人ゲストが感じる以上に高いハードルです。この記事では、電話予約中心の運営が海外ゲストにとってなぜ機会損失につながるのか、そして無理なくオンライン予約導線を整備していくための考え方を解説します。
なぜ電話予約が海外ゲストにとって特にハードルが高いのか
言語の壁
英語で電話対応ができるスタッフが限られている場合、海外ゲストは「電話をかけても通じないかもしれない」という不安から、電話自体をためらってしまいます。オンラインの問い合わせフォームであれば、翻訳ツールを使いながら時間をかけて文章を作成できますが、リアルタイムの会話ではそれができません。
時差の問題
海外ゲストにとって、日本の営業時間に合わせて電話をかけることは、時差によっては深夜や早朝にあたることもあります。オンラインで完結できる予約手段があれば、こうした時差の制約を受けずに、ゲストの都合の良いタイミングで予約手続きを進められます。
国際電話のコスト・心理的な抵抗
国際電話をかけること自体に、料金面・心理面での抵抗を感じるゲストも少なくありません。特に、まだ日本を訪れたことのない旅行者にとっては、電話という手段そのものが、他の候補の宿(オンライン予約が可能な宿)へ流れる要因になり得ます。
電話予約中心のままだと実際に起きていること
- 深夜・早朝に届いた海外からの問い合わせに対応できず、その間に他の宿へ流れてしまう
- 英語での電話対応に自信がなく、担当者が対応を後回しにしてしまう
- 電話でのやり取りの伝達ミス(日程、人数、要望など)が発生しやすい
- そもそも「電話をかける」という選択肢自体で、問い合わせを諦められてしまう
これらはいずれも、サイトの魅力やコンテンツの質とは関係のない、導線設計の問題によって発生している機会損失です。
段階的にオンライン化する3つのステップ
すべてをいきなりシステム化する必要はありません。無理のない範囲で、以下のような段階を踏んで整備していく方法があります。
ステップ1:空室状況だけでもオンラインで確認できるようにする
本予約はできなくても、カレンダー形式などで大まかな空室状況を確認できるようにするだけで、「電話をかけてみないとわからない」という不安を軽減できます。
ステップ2:仮予約フォームを設置する
オンラインで日程・人数・希望プランなどを送信できる仮予約フォームを用意し、確定の連絡は電話やメールで行う、というハイブリッドな運用も有効です。これにより、少なくとも「最初の一歩」はオンラインで完結できるようになります。
ステップ3:決済まで完結するオンライン予約システムを導入する
将来的には、空室確認から決済までを一貫してオンラインで完結できる予約システムの導入を検討しましょう。初期費用や運用の手間はかかりますが、長期的には機会損失の削減と業務効率化の両方に貢献します。
既存のOTAをうまく活用するという選択肢
自社サイトに本格的な予約システムを導入するのが難しい場合、Booking.comやAgodaなどのOTAをオンライン予約の受け皿として活用するのも現実的な選択肢です。自社サイト上に「オンラインで予約する」ボタンを設置し、OTAの予約ページに誘導することで、電話をかけずに完結できる導線を用意できます。手数料は発生しますが、機会損失を防ぐという観点では十分に検討する価値があります。
電話対応をなくす必要はない
ここで伝えたいのは「電話予約をやめるべき」ということではありません。日本人ゲストや、電話でのやり取りを好む一部の海外ゲストにとって、電話という選択肢は今後も重要です。重要なのは、電話しか選択肢がない状態を解消し、ゲストが自分に合った方法を選べるようにすることです。
導入時に注意したいポイント
- オンライン予約とフロントでの電話予約が両方ある場合、ダブルブッキングを防ぐための在庫管理の仕組みを整える
- オンライン予約完了後の確認メールが、英語で自動送信される設定になっているか確認する
- 新しい予約手段について、既存のフロント業務フローとどう連携させるかを事前に整理しておく
まとめ:選択肢を増やすことが、機会損失を防ぐ第一歩
電話予約中心の運営そのものが悪いわけではありませんが、それしか選択肢がない状態は、海外ゲストにとって大きなハードルになり得ます。一度にすべてを変える必要はなく、まずは空室確認や仮予約フォームなど、無理のない範囲からオンライン化を進めてみることをおすすめします。
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